漆刷毛(うるしはけ)
漆の*上塗に用いる*刷毛。*下地刷毛に対して上塗刷毛ともいうが、普通は漆刷毛と称している。毛は粘着質の漆に負けないぐらい丈夫であることが大切で、婦人の頭髪がよいとされる。赤毛といって、染めたりパーマメントをかけたりして痛んでいない生き毛が最高で、それもできたら三十年ぐらい乾燥させて毛髪中の油分を抜け切らせたものがよいといわれる。したがって寺や神社に神仏祈願のために奉納されていて、長い年月を経た毛や、油をつけない海女の毛などが最高の素材とされる。しかし実際にはそのような毛ばかりで作るわけにもいかず、毛髪に牛毛を混ぜた*立交ぜといわれる刷毛や、牛の尾の毛だけで作った*尾刷毛と称する刷毛などもある。毛を梜む板木には、檜のしかも柾目のよい部分だけが選んで使われる。また漆刷毛が他の普通の刷毛と異なる最も大きな特色は、使っているうちに毛先がすり減ってきたら、鉛筆を削るのと同様に檜板を削って順に中の毛を削り出して使える点である。このため毛が板木の長さ全部にまで通っている刷毛は、最後まで板を削り出して使える。このような刷毛を*本通しと呼んでおり、このほか半ばまで通した*半通しや、四分の一ほど通した*山刷毛と称する刷毛もある。