漆(うるし)
漆樹の外皮と材部の間の漆液溝より滲出する乳白色の粘稠液で、空気中で褐色に変色する。漆樹には日本、中国などに生育分布する和名*ウルシノキのほか、*アンナンウルシ、*ビルマウルシ、*カンボジアウルシなどがある。また幹から搔き取った漆を*辺漆、枝から取ったものを瀬しめ漆といい、*辺漆には時期により*初漆、*盛漆、*末漆などの区別がある。また辺漆のあとに取る*裏目漆、*止漆というのもあり、これら採取したての漆を*荒味漆というのに対し、「*なやし」と「*くろめ」を行って精製したものを*精製漆という。精製漆には用途により*生漆、*梨地漆、*蠟色漆などがある。漆の成分*ウルシオール(六〇ー八〇%)、水分(一〇ー三〇%)、ゴム質(三ー八%)、含窒素物(一ー三%)であり、主成分のウルシオールが多いほど良質の漆といえる。漆液の採取法には*殺搔法、*養成法などがあり、一日のうちでは湿気の多い朝と夕方が最も漆液の出がよいといわれる。なお今日のわが国の主な漆の産地は岩手県、青森県、茨城県などである。