堆朱(ついしゅ)
*彫漆の一種で、朱漆を何層にも塗り重ねて、これに文様を彫り表わしたもの。あるいは彫漆の代名詞としても用いられる。黒漆のものは*堆黒、黄漆のものは*堆黄といい、中国ではそれぞれ*剔紅、*剔黒、*剔黄と称する。これらの彫漆は中国唐代よるあるといわれ、宋代に盛んになり元代には張成、楊茂などの名手を輩出した。さらに明代に入ると官営の果園廠で優れた堆朱が作られるようになり、遺品も多く名工として張徳剛の名があげられる。わが国には鎌倉時代から室町時代にかけて伝えられ、珍重された。応仁年間(一四六七ー九)には京都の門入などによって初めて堆朱が行われたといわれる。また張成と楊茂からその名をとったといわれる*堆朱楊成が、代々足利将軍に仕え、のちには徳川将軍の用命を受けた。現在も*鎌倉彫などに、この技術の流れが見られる。