常憲院時代もの(じょうけんいんじだいもの)
元禄年間(一六八八ー一七〇四)を中心に盛んに作られた、伝統技術を駆使した豪奢な*蒔絵。当時は五代将軍綱吉の時代であり、彼の院号に因んで常憲院時代ものと称される。元禄の華美な風潮の中で、*幸阿弥派と*五十嵐派を中心に、金銀を多量に使って技巧の限りを尽した精密な蒔絵が作られた。当時の名工としては両派のほか*古満休意、*山田常嘉、*塩見政誠などが知られ、代表的作例としては「山水蒔絵棚」があげられる。技術的には極度に発展したが、やがて末梢主義に陥り、芸術的価値やさらに工芸品としての実用性も失われていった。