沢千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃(さわちどりらでんまきえこからびつ)
平安時代、国宝。小型の合口造りの唐櫃で胴張り長方形、四脚の足がある。図柄は『西本願寺三十六人家集』の料紙にあるものと同じで、杜若や沢瀉の咲き乱れる水辺を千鳥が飛ぶ状景を描いたものである。蓋表から側面にかけて*黒塗に*鑢粉の*淡蒔を用い、土坡は*小判粉を濃淡に*蒔きぼかし、水辺の沢瀉や杜若などは*研出蒔絵を主とし、毛彫りを加えた*螺鈿を配して優美な図柄を一層効果的にしている。蓋表には草花蝶鳥文様を金蒔絵で散らし、中の*懸子には透し彫の金銅宝相華丸文を嵌入し、その間に螺鈿の唐草文を配している。また蓋と味に精緻な宝相華文の毛彫り鍵金物、脚の上部には瀟酒な千鳥と蝶形の飾り金物が打ってある。平安時代の特徴である純やまと絵の優婉な表現が見られる逸品であ。和歌山県金剛峯寺蔵。