讃岐漆器(さぬきしっき)
香川県高松産の漆器の総称。寛政年間(一七八九ー一八〇一)に*玉楮象谷が考案した*象谷塗を基盤とする、*蒟醤や*存星漆器がの特長とされる。蒟醤も存星も素地は網代編みの*籃胎で、*漆下地に*黒漆の*下塗、適当な*彩漆の*中塗および*上塗が施してある。蒟醤の場合はその上塗を施し*炭研ぎと*胴擦りをした面に、タイ国の蒟醤に見られるような文様を三角形で陰刻し、その凹面に各色の*彩漆を塗り込み、平らに研いで*蠟色仕上げしたものである。存星は同じ上塗して胴擦りした面に文様を*置目し、黒漆で描いて炭研ぎを施す。再び黒漆で描き平滑に研いだ後に、その上に彩漆で陰影をつけて描き、乾燥後*蠟色炭で研いで胴擦り蠟燭色磨ぎをする。次に文様の輪郭を存星彫り用の三角ノミで深目に彫り、葉脈や花弁の毛彫を施す。最後にこれらの輪郭に延漆を摺り、良く拭いて、真菰粉を蒔くこともある。また蒟醤や存星のほかに、讃岐漆器としては*堆朱・堆黒や新川乙吉考案の*擬屈輪彫、後藤太平考案の*後藤塗や彫抜盆などがある。なお明治三十一年に高松市に香川県立工芸学校が創立され、漆工科や絵画彫刻科が設けられて工芸家の養成が行われている。昭和二十四年には通産省より重要漆工集団地の指定をうけ、さらに昭和二十七年には文部省より蒟醤塗と存星漆器が無形文化財として指定された。昭和三十四年には県立漆芸研究所が設置され、漆芸の発展に尽している。