奈良漆器(ならしっき)
奈良市より産する漆器。古代の逸品に範を求めたものが多く、特に*螺鈿の技法が奈良漆器の特徴とされる。これは一定の厚さの*厚貝を任意の文様に切って*布着せをした*素地に貼り、*漆下地を施したあと貝の方が高くなるように研ぎ出し、*下塗、*中塗、*蠟色漆の*上塗を施して*蠟色研ぎをしたものである。そのほか奈良根来塗や*断文塗などがある。奈良はわが国の漆工芸発祥の地で、天武天皇の御代(六七三ー八六)に赤漆で器物を塗装したのが始まりとされ、今日でも当時の逸品を多く保管しているが、平安に都が移ってからは衰退し、さらに正応年間(一二八八ー九三)より*紀州漆器が発達してくると圧倒され衰微していった。なを明治七、八年頃から三谷喜太朗が天平時代の古器物を模造した骨董的な作品を製作した。