金銀鈿荘唐大刀(きんぎんでいそうからたち)
奈良時代。正倉院宝物の一つで、その鞘の装飾」が*末金鏤と呼ばれ、のちの*研出蒔絵の源流となる技法であるところから、貴重な品として名高い。その鞘は*黒漆を塗った上に粗い金の*鑢粉で動物や唐草、飛雲などを表わしてある。これは漆で文様を描いて鑢粉を蒔き、さらにその上に漆を塗って研出したもので、のちの研出蒔絵と同じ手法である。ただし研出蒔絵と比べて金粉が粗く、かつ大きさが不ぞろいである。またかつてはこの文様を、金粉を漆と練り混ぜて描いたとする説があったが、あまり粗い金粉は漆と混ぜることが難しく、練描の特微である筆意や鑢粉の方向の同一性が見られないところから、今日では研出蒔絵の技法とされている。なおこの大刀には、もう一つ中国製と日本製のどちらかという疑問点がある。唐大刀という名称から唐製とする説と、中国では末金鏤という言葉も、それにあたる技法も見られないなどの理由から日本製とする説があるが、この点は今のところまだ詳かでない。奈良市正倉院蔵。