鎌倉彫(かまくらぼり)
木地に文様を彫り、その上に朱漆、あるいは朱漆と緑漆を塗ったもの。宋人陳和卿がもたらした*堆朱や*紅花緑葉といった*彫漆の影響をうけて、十三世紀初めに仏師康運あるいはその子*康円が鎌倉法華堂の仏具をつくったのが鎌倉彫の始まりであるという伝えがある。室町時代には香合や笈などに盛んに応用され、優品が多く遺っている。文献的には三条西実隆(一四五五ー一五三七)の日記『実隆公記』に「鎌倉物」という言葉が見られ、さらに元禄七年(一六九四)に書かれた『万宝全書』という当時の骨董解説書に「鎌倉彫」の名称が出てくる。木地にはヒノキ、カツラ、ホオなどが使われ、直接あるいは一度和紙に描いて転写して下図をつける。木彫りを施したら、彫り面の角をなだらかにし、*生漆でかためたあと*黒漆を塗り、さらに彩漆を塗って仕上げる。なお鎌倉彫は江戸末期には衰退し、明治に入って仏師たちによって再興された。ことに三橋鎌山(運慶二十六代)や佐藤運久は鎌倉彫中興の祖といわれる。小田原彫、越前彫、吉野彫とよばれるのも鎌倉彫の一種である。