一閑張(いっかんばり)
木型などに紙を糊や漆で張り重ね、後で型を抜いて*素地とし、その上に漆を塗ったもの。軽くて変形せず、特に日本紙だけを使ったものは上等品とされる。なお古く文庫や机など大きいものには、木や竹などを芯にして紙を張り、漆を塗り重ねたものもある。江戸時代に中国から亡命してきた*飛来一閑が考案して、茶人好みの器を作ったところから一閑張の名があるといわれ、また別に茶人武野紹鷗が号名を一閑居士といい、彼が紙を蝶張りしにて茶器を作ったのが始まりともいわれる。張り合わせの接着剤としては、なめくじを擂ったもの、蕨の根を擂って作った糊、こんにゃく糊、海藻糊などがよいとされる。なお新聞紙を木型に張り重ねて*張抜素地としたものも一閑張と称され、大正から昭和初期にかけて名古屋や静岡で針箱等に盛んに用いられたが、やがてセルロイド製品に駆逐された。