仏功徳蒔絵経箱(ぶつくどくまきえきょうばこ)
平安時代、国宝。*素地は非常に薄い木製で、形は長方形の深い被せ蓋造り、そして口縁には同時代の「*宝相華蒔絵宝珠箱」などと同様に紐を巻きめぐらして銀粉を蒔きつけ、*置口としている。意匠は*平塵の地に、法華経の釈迦の本生譚から取った題材を絵解的に表わしている。すなわち蓋の側面には「提婆達多品第十二」の説話より、裟竭羅龍王の龍女が仏に宝珠を献じて成仏したという功徳が描かれ、蓋の表にはその龍女の成仏を迎える浄土の場面が描かれている。蓋の他の二側面には他の説話より、過去世の釈迦が阿私仙という仙人に仕えて精勤し、成仏をなしえた図が描かれ、さらに身の各面には「薬草喩品第五」より慈雨にうるおう三千大世界を表わすなど諸説話が描かれている。同時代の他の*蒔絵が非常に規則的に様式化した文様を表わしているのに比べ、題材の性質上絵画的な趣が強く異色の作品といえる。大阪市藤田美術館蔵。