宝相華蒔宝珠箱(ほうそうげまきえほうじゅばこ)
平安時代、国宝。この宝珠箱は、経典の功徳の象徴で、思いのままに願いをかなえるという如意宝珠という玉を綿に包んで収める箱であり、四天王の図を彩色で表わした板絵がその守護として付属している。*素地は「*宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱」と同じ麻布を貼り合わせた*𡑮で、方形入角形の深い被せ蓋造りの箱である。そしてやはり「冊子箱」と同様に蓋と身の口縁に紐を巻きめぐらし、それに銀粉を蒔きつけて*置口としている。意匠は金鑢粉を濃く蒔いて*平塵の地とし、宝相華と瑞鳥を金銀の*研出蒔絵で全体にびっしりと表わしている。これを「冊子箱」の文様と比べると、宝相華がやや形式化されて動きに乏しく、また全体の文様の構成も完全に対称的な配置となっている。さらに蓋の側面は尾の短い鳥を中心にしてその四方に尾の長い鳥を配しているのに対し、身の側面は逆に尾の長い鳥の四方に尾の短い鳥を置くというように、蓋と身の文様の関係にも、意識的な形式化がうかがわれる。これらのことからその製作年代は「冊子箱」よりやや後と思われる。なお寺伝によると宇多天皇(八六七ー九三一)が法皇として仁和寺に出家されていた時の所持品であるとしている。京都市仁和寺蔵。