平文(ひょうもん)
金銀あるいは錫、鉛などの薄い延板を文様の形に切って漆塗の上に貼ったもので、さらにその上に漆で塗り埋めて研出したものと、文様の上だけ漆を小刀などで剥がし取ったものがある。正倉院宝物に多く見られる技法で、その目録の台帳には平文と共に*平脱という言葉もみられるが、平文が和名で、平脱はその唐名と思われる。「金銀平文琴」がその代表作で、平安時代以後は、この技法が*蒔絵の中に併用されるようになり、「*金貝」の名称で呼ばれた。有名な*本阿弥光悦の「*舟橋蒔絵硯箱」や*尾形光琳の「*八橋蒔絵硯箱」の橋を表わす鉛板の使用も、そうした伝統的技法をふまえた一種の平文といえる。