平蒔絵(ひらまきえ)
*絵漆で文様を描いて乾かぬうちに粉を蒔き、乾燥後その部分にだけ漆を塗り、磨いて光沢を出したもの。あるいは粉を蒔きつけたままで磨かない*蒔放しという技法もある。平蒔絵は*蒔絵の技法の中で最も簡単で基本的なものであるが、*研出蒔絵が平安時代に盛んに行われたのに対し、実作例は安元元年(一一七五)の「蓮池蒔絵経櫃」が最も古く平安末期である。鎌倉時代には金地に細い線描きの平蒔絵が施されるようになり、室町時代にさらに発達した。そして桃山時代から江戸初期にかけては平蒔絵の全盛期で、*高台寺蒔絵にみられるように蒔放しによる軽妙洒脱な蒔絵が多く作られた。江戸中期以降は、*高蒔絵や研出蒔絵のつなぎの部分に用いられ、平蒔絵独特の効果を生かした表現は行われなくなった。