挽物素地(ひきものきじ)
木材を轆轤や旋盤で工作し漆器の*素地としたもの。挽物素地に用いられる樹種には欅、栗、イタヤ、栃、朴、タモ、桂、ミズメサクラ、セン、ブナなどがある。また木材の木取には、横断して切った竪木取り(木口取り)と、縦断して厚板とした横木取りがある。挽物の製作はまず轆轤や旋盤で荒挽し、乾燥して形に狂いが生じたら、中挽で形を整え再び乾燥する。最後に素地の水分が平 状態になって膨脹や収縮がやんだら仕上挽をする。挽物の歴史は古く、中国漢代の楽浪の遺品に轆轤加工のものが見られ、わが国では大宝年間(七〇一〜四)に*筥陶司の職制と称する木器作りの司があって、そこの木器に轆轤製のものがあったといわれるほか、天平宝字八年(七六四)に全国の国分寺に陀羅尼を納めて百万塔が奉納されたが、この百万塔のうち轆轤製のものが現存している。