飛騨春慶(ひだしゅんけい)
岐阜県高山市産の*春慶塗。慶長年間(一五九六ー一六一五)に大工高橋喜左衛門が批目盆を作って城主金森可重の子重近(のち*宗和)に献上し、重近がこれを成田三左衛門に塗らせたのが起りとされる。春慶塗の名は陶工加藤景正の春慶の茶壺に色相が似ているところから、金森可重が命名したものといわれる。*素地にはヒノキとサクラを用い、年輪の春材のところを がした人工的批目や、細い小丸鉋で直線の溝をつけた鉋目、小刀で割目に擬して 風に筋をつけた突目、あるいは桜材で作った松竹梅などの模様を木槌で打ちつけ、平らに鉋をかけたあと水につけて模様部を凸起させた打出模様などの加工法がある。着色には*黄春慶と*紅春慶があるが、今日では黄春慶がほとんどである。なお飛騨の漆工*山打三九郎が能代に移って春慶塗を伝えたのが、*能代春慶の始まりという説がある。