初音蒔絵三棚(はつねまきえさんだな)
江戸初期、*幸阿弥長重の作、重文。徳川家三代将軍家光の長女千代姫と尾張徳川家二代光友の婚礼の際に、幸阿弥家十代長重が三年の歳月を費して仕上げた調度である。三棚とは厨子棚・黒棚・書棚の三つ一組のもので、その他の付属品と共に徳川美術館に保管されている。意匠は『源氏物語』の初音の巻「年月を松にひかれてふる人のけふ鶯の初音きかせよ」の歌意を描いたもので、殿舎に庭園の図柄である。全体に*梨地を密に蒔き、*高蒔絵に*切金・埋め珊瑚などを混じえた豪華な作で、室町以来の伝統技法の精粋を尽したものといえる。なお別に「初音蒔絵手箱」が東京国立博物館に所蔵されているが、おそらくこの三棚の付属品であったと思われる。