秋野鹿蒔絵手箱(あきのしかまきえてばこ)
鎌倉時代、国宝。蓋表には萩の咲き乱れる野辺で親子の鹿が戯れ、小鳥が飛び、繁みでは虫が鳴くという秋野の状景が描かれており、身の周囲には萩と小禽が描かれている。*研出蒔絵を主とし、鹿と岩は金を用いて輪郭を線描きし、萩の花や鳥には*螺鈿を混じえて色彩の変化を表している。蓋の甲は高く盛り上がり、器形はやや胴張りで二重の*懸子があり、*手箱と称しているが、恐らく*櫛笥と思われる。平安後期の様式の特色を示しているが、かなり写実的表現がみられ、鎌倉様式へ移る過渡的な作である。島根県出雲大社蔵。